ガイドラインとは
ガイドラインは、
『科学的に確かめられた最良の治療などが書かれた資料』
です。
この記事ではガイドラインをもとにして説明します。
小児肥満の判定法
成人の肥満判定には、BMI(Body Mass Index)が用いられます。
BMIについて詳しくはこちらの記事を参照してください。
![](https://www.hajimari-body.com/wp-content/uploads/2020/10/siora-photography-cixohzDpNIo-unsplash-320x180.jpg)
しかし、成長過程にある子どもではBMIを肥満判定に使えません。
そこで『肥満度』という独自のものが使われています。
肥満度(%)=([実測体重-標準体重]/標準体重)×100
肥満度は、性別・年齢・身長の標準体重に対して、その何%に相当するかを表します。
それぞれの標準体重は下のリンクを見てみてください、
この表は2000年の、
厚生労働省の乳幼児身体発育調査報告書(0歳~6歳)と
文部科学省の学校保健統計報告書(6歳~17歳)のデータをもとに、
男女毎に、身長に対する体重の中央値を求めて標準体重としたものです。
上の式と表から、肥満度を計算したら、判定基準を使って判定します。
以下の表が、肥満度の判定基準です。
![](https://www.hajimari-body.com/wp-content/uploads/2021/03/スクリーンショット-2021-03-31-16.33.53-1024x592.jpg)
皆さんのお子さんで、気になる子がいたら一度計算してみてあげてくださいね。
子どもの肥満症・メタボリックシンドローム
子どもも大人と一緒で、
肥満症やメタボリックシンドロームになります。
肥満から、高血圧や糖尿病、動脈硬化などの病気になることもあります。
そして、肥満症は、
『肥満による健康障害が合併するか、その合併が予測される場合』に、
病気として診断されます。
子ども特有の健康障害としては、
「肥満に起因する不登校、いじめ等」もあります。
小さい頃、クラスで太っていた子に対するいじめはありませんでしたか?
あれも今では、治療の対象となります。
小児肥満症・小児期メタボリックシンドロームの治療
小児肥満症と小児期メタボリックシンドローム、
そして治療可能な基礎疾患を有する二次生肥満が、
病院での治療対象となります。
それ以外の肥満小児に対しては、健康教育と肥満が増悪しないための生活指導を行います。
基本は、
「早寝・早起き・朝ごはん」などの健康的な生活リズムの確立を目指した指導です。
国も平成18年に「早寝早起き朝ごはん」全国協議会を設立し、普及に取り組んでいます。
![](https://www.hajimari-body.com/wp-content/uploads/2020/11/hayanehayaokiasagohan2-830x510-1.jpg)
治療方法としては、食事療法・運動療法・認知行動療法があります。
薬物療法や手術療法が適応になることはほとんどありません。
食事療法が治療の基本となりますが、小児は成長・発達の過程にいます。
あまりに厳しいエネルギー制限は、発育を妨げるため、本末転倒です。
その子の性別・年齢・身体活動レベルに合わせて、
『推定エネルギー必要量相当の約90%のエネルギー量を、
タンパク質(P)20%、脂質(F)25-30%、糖質(C)50-55%のPFC比率』
で食べるようにします。
糖質を制限する、低糖質ダイエットなどは、子どもには適していません。
また可能な限り、家族揃って楽しい雰囲気の中で食事をするなど、環境整備も重要です。
子供が太る要因として、家庭の環境はかなり大切とされています。
楽しく、偏らないご飯を食べるだけで十分痩せることが出来ます。
小児の運動療法と認知行動療法
運動を好まないことは、肥満やメタボリックシンドロームの原因になりますが、
最近は『スクリーンタイム(テレビ、ゲーム、スマホなどをみている時間)が長いこと』も、原因になっています。
でも、今は子どもも外で遊びまわる環境が少ないので、
ゲームばかりすることを、子どものせいには出来ない世の中だと思います。
日本スポーツ協会ではアクティブチャイルドプログラム(ACP)を開発し、
運動習慣をつけるようにサポートしています。
広島東洋カープも屋内練習場を開放し、
アクティブチャイルドプログラムに賛同した活動をされているのは素敵だなと思います。
子どもの場合は、食事・運動療法単独よりも、
家族ぐるみの認知行動療法を併用した方が有効性は高いとされます。
生活自己管理チェックリストとして
- 朝食を食べること
- 給食でおかわりをしないこと
- 夜食を食べないこと
- ジュースを飲まないこと
- おやつの量を守ること
- スクリーンタイムの制限
- 家の手伝いをすること
の7項目について毎日自己評価させることを提唱しています。
このチェックリストを用いた認知行動療法は、男児より女児に特に有効のようです。
成人肥満につなげない
日本では、1970〜2000年の30年間で肥満傾向児の頻度は2〜3倍に増加しましたが、
2000年以降は若干低下傾向にあります。
しかし、思春期の肥満傾向児は減少しておらず、
大人の肥満へつながっていることが問題となっています。
しかし、この移行期の問題について、
いまだ十分な議論がなされていないのが日本の現状です。
肥満の背景に、発達障害が存在する例や、
貧困など社会的背景を有するものが多いことも小児肥満の特徴であり、
社会的サポートも必要とされます。
おわりに
子どもの肥満は、大人がサポートしてあげる必要があります。
早めの介入を行い、成人期肥満につながらないようにしましょう。