肥満症診療ガイドライン

肥満症診療ガイドラインから考えるダイエット④ 〜運動療法 〜

雪丸くん
雪丸くん
運動は「療法」って名前がつくように、治療の1つなんだよ!
にゃんちゃん
にゃんちゃん
たしかに!ひどかった肩こりも、運動する習慣がついたらだいぶ楽になったよー!

ガイドラインとは

ガイドラインは、

『科学的に確かめられた最良の治療などが書かれた資料』

です。

この記事ではガイドラインをもとにして説明します。

運動の効果

運動療法について、肥満症診療ガイドラインには大きく4つの効果が述べられています

  • 減量および肥満予防
  • 減量体重の維持
  • 運動単独または食事療法との併用により、糖質・脂質代謝指標(HbA1c・トリグリセリドなど)・血圧の改善や、糖尿病の発症予防
  • 筋力トレーニングは減量中の骨格筋量の減少を抑制、代謝指標・血圧を改善

ちょっと言い方を変えると

  • やせる
  • 太りにくくなる
  • 血糖値を下げる
  • インスリン抵抗性を下げる(血糖がコントロールしやすくなる)
  • 高血圧や脂質異常症の改善
  • 筋萎縮や骨粗鬆症の予防
  • 心肺機能を改善
  • 運動能力が向上
  • 気分をあげる、QOL(生活の質)を上げる

いいことばかりですね!

体重コントロールするための運動量

運動療法による体重減少は、実際にどのくらいエネルギーを使ったか、

エネルギー消費量に依存します。

動けば動くほど痩せるわけですが、動き続けるのは大変ですね。

生活の中でどのくらい動いているかを表現する言葉に「身体活動量」があります。

身体活動量が増えれば(ちょっとした動きが増えれば)、

減量や体重の維持が期待できます。

身体活動量の指標として以下が用いられます。

体重増加の予防

週150〜250分(週1,200〜2,000 kcal)

減量

中強度×週150分未満では体重減少はわずか

中強度×週150分以上で〜2,3kgの減量

中強度×週225〜420分で5〜7.5kgの減量

活動量が多ければ体重減少量も大きい

減量後の体重維持

中強度×週200〜300分,

高強度はより少ない時間で良い

Med Sci Sports Exerc. 2009; 41: 459-71

週200分をクリアするために、1日約30分の運動が必要になりますね。

運動強度 METs

運動強度を示す指標として、 METs があります。

中強度の生活活動(METs 3.0〜5.9)としては、

やや速足の歩行(4km/時)、自転車、掃除機をかける

などがあります。

運動としてはゴルフ卓球ダンスなどが中強度とされます。

もっと詳しく知りたい方は、改訂版『身体活動のメッツ(METS)表』をご参照ください。

METsを意識して『やせやすい』生活

日常生活の動き1つ1つをMETsでみてみると、

思っていた以上にエネルギーを消費する活動があることに気づきます。

METsの値を知っていると、

車や電車での通勤や買い物を自転車に替えたり、

エレベーターやエスカレーターは使わずに階段を使うようにしたり、

少しでもエネルギー消費の高い身体活動に置き換えることが、

身体活動量を増やすのに有効であることが理解できます。

「Burn Calories, Not Electricity. Take the Stairs!

(電気を使わず、カロリーを燃やそう。階段を使おう!)」

ニューヨーク市が市民の身体活動を増やすために作成したポスターのキャッチコピーです。

エレベーターに乗ると1.3METsですが、

代わりに階段をゆっくり上ると4.0METsで約3倍、

速く上ると8.8METsで約7倍のエネルギーを消費することになります。

わざわざトレーニングウェアに着替えて、

ランニングに出かけたり、ジムに通ったりしなくても、

健康や体力づくりのために体を動かそうという意識を持ち、

日常生活の中の身体活動をほんの少し変えるだけで「運動」にすることができます。

そして、それが治療にもつながります。

おわりに

運動することは、確実に身体を変えます。

良い方にです。

運動することに壁を感じる方は、

まずMETsを意識して、日常生活の習慣を変えてみましょう!