肥満症診療ガイドラインとは
まず、『ガイドライン』について説明します。
診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価、益と害のバランスなどを考量して、患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書
福井次矢・山口直人監修『Minds診療ガイドライン作成の手引き2014』医学書院.2014.
ちょっと難しい表現ですが、
簡単に言うと、
「その人の病気などに対して、現時点で最適な方法を選択するための案内」です。
ガイドラインにあることが、今後永遠に正しいわけではないです。
ただ現在ある科学的知見のなかで頼りになる情報をまとめたものになるので、
病院では、この情報を基に診療をすることが基本になります。
『肥満診療ガイドライン2016』は、
肥満を診療する時のガイドライン最新版になります。
肥満と肥満症
さて、本題に移ります。
『肥満』と『肥満症』の違いですが、
簡単に言うと
肥満 :太っていること
肥満症:太っていることによって健康に害が生じていること
になります。
その基準となる数値ですが、
肥満:BMI≧25kg/m2
肥満症:BMI≧25kg/m2 かつ
1) 肥満に起因ないし関連する健康障害があるか、健康障害の合併が予測される場合で、減量を要するもの
2) ウエスト周囲長で内臓脂肪蓄積を疑われ、腹部CT検査で確定診断された内臓脂肪型肥満
*BMI=体重(kg)/(身長(m)×身長(m))
『BMI = 25kg/m2』というのが重要な分かれ目になりますね。
例えば、身長160cm の人なら、64kgが BMI = 25kg/m2です。
当てはまる方も多いと思います。
また、さらに『高度肥満』としてBMI ≧ 35kg/m2 があります。
以下に図としてまとめます。
![](https://www.hajimari-body.com/wp-content/uploads/2020/10/20160802144121_fig01L.gif)
*常に念頭において診療する **下記 ***肥満、高度肥満でも減量指導は必要
(肥満症診療ガイドライン2016、一部改編)
日本人で、最も健康的(疾患合併率が低い)なBMIは、
男性22.2、女性21.9
だったことから、わが国では標準体重がBMI22×(身長[m]2 )に設定されています。
例えば身長160cm(1.6m)の人の標準体重は
=22×1.6×1.6=約56kg
になります。
以上から、BMI=22前後が、健康の1つの目標値として考えられています。
肥満による健康障害
では、『肥満症』という健康に害が生じるというのは、どのような状態でしょうか。
肥満に関連する健康障害として以下のものが挙げられます。
耐糖能異常、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症、冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症)、脳梗塞、非アルコール性脂肪性肝疾患、月経異常、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、肥満低換気症候群、変形性関節症・脊椎症、肥満関連腎臓病
平成30年の国民健康・栄養調査では、男性32.2%、女性21.9%が肥満とされています。
これは近年、数として増えてはいませんが、減ってもいません。
この数値が減ってくれば、生活習慣病とされるような健康障害も減るはずですね。
おわりに
肥満が、肥満症になる前に改善することが大切です。
そして、肥満症が有害といっても、十分に自分の力で改善も可能です。
少しずつ肥満を解決する策を身につけていきましょう!