妊娠したら安静第一?
赤ちゃんのことを大切に考えると、
妊娠したら安静が第一かな?と考える方も多いと思います。
妊娠初期、安定期に入っていない時は特にそうではないでしょうか。
今回は妊娠中の運動の効果と、その際の注意点をお伝えします。
妊娠中の運動の有効性
結論から言うと
『出産前後は、適切な運動が有効』とされています。
妊娠中の運動の有効性として、
体力の維持・向上
過剰な体重増加の予防
妊娠に伴う高血圧の予防
妊娠に伴う糖尿病の予防・治療
腰痛の予防
分娩時間の短縮
早産・帝王切開のリスクの低減 など
(Gregg, et al. Clin Sports Med. 2017.
Mascio, et al. Am J Obstet Gynecol. 2016.
Magro-Malosso, et al. Acta Obstet Gynecol Scand. 2017.)
が挙げられます。
アメリカでは、妊娠中も運動を楽しむ妊婦の方は約60%とされています。
しかし、推奨される運動量を達成する妊婦は3-15%と、
十分量の運動はできていないがの実情のようです。
(Forczek, et al. Obstet Gynecol Survay. 2017. Currie, et al. PLOS one. 2013.)
米国産婦人科学会のガイドラインでは、
運動が禁止とされる合併症(下記表)がない健常な妊婦に対しては,
1日当たり最低20~30分間の中強度運動をなるべく毎日実施することを推奨しています。
(ACOG Committee Opinion No.650. Obstet Gynecol. 2015)
血行動態的に明らかな心疾患
拘束性肺疾患
不全頸管・締結
早産リスクのある多胎妊娠
中期もしくは後期の持続性出血
26週以降の前置胎盤
今回の妊娠での切迫早産
破水
子癇前症・妊娠高血圧症候群
重症貧血
たくさん並べると不安になりますが、
主治医の先生に「大丈夫」かどうか、ぜひ一度聞いてみてください。
確認し、安心して運動を始めましょう!
妊婦スポーツの方法
詳細な内容は、日本臨床スポーツ医学会で提言している「妊婦スポーツの安全管理基準」が参考になります。
要点をピックアップします。
原則として、妊娠12週以降
有酸素運動、かつ全身運動で楽しく長続きするもの
腹部に直接的な外傷を与えるものや落下のリスクがあるもの、接触による外傷性リスクの高いもの、過度な腹圧がかかるものは避ける
妊娠 16 週以降では,長時間仰臥位になるような運動は避ける
産科主治医に運動することを伝える
心拍数で150bpm以下、自覚的運動強度としては「ややきつい」以下が望ましい
午前10時から午後2時の間が望ましい
週2〜3回で、1回の運動時間は60分以内
ウォーキングやエアロビクス、エルゴメーター、水中歩行、アクアビクスが安全性の高い種目として薦められます。
最近ではヨガや、ピラティスも人気です。
ランナーの真鍋未央さんもヨガ体験をアップされています。
元々アスリートの方であれば、心拍数150bpm以下を保ちながら、長時間余裕で走ってしまう方もいます。
適切な運動量は、人それぞれです。
人と比べず、自分が「ややきつい」と感じるくらいで継続できる運動を楽しんでください。
筋トレは大丈夫?
筋トレ(筋力トレーニング)は、レジスタンストレーニングとも言われ、
有酸素運動と組み合わせて実施することが、
米国スポーツ医学会のガイドラインでも推奨されています。
どのくらい運動するかのオススメとして、
週2~3日の頻度で、強度は8〜15回程度続けられる重さで、
ほどほどの疲労を感じるくらいの負荷が推奨されています。
マシントレーニングやフリーウエートは,誤った使用方法などから事故につながる恐れもあり、
自重トレーニングのほうが安全性は高く、自宅でも実施できるため継続性も高いです。
レジスタンストレーニングを行う際の注意点として、
息こらえや高強度の負荷によって腹圧をかけることは妊娠管理上は望ましくないため、
しっかりと呼吸をしながら、無理のない強度での実施が推奨されます。
また、妊娠16週以降は子宮が大きくなるため、
長時間の仰臥位(あおむけ)は、静脈還流量の低下、心拍出量の低下をもたらす危険性があり、
腹筋やヨガなどを行う際には、体位にも注意を払うべきとされます。
注意点を守って、自重を使ったスクワットや体幹トレーニングは、
妊娠中の腰背部痛の予防 (Schoenfield, B. Conditioning Journal. 2011)
産後の尿失禁の予防 (Artal, et al. Br J Sports Med. 2003)
に有効です。
産後の運動の有効性
妊娠中だけでなく、産後の運動も有効とされます。
産後うつを減少 (Dipietro, et al. Med Sci Sports Exerc. 2019)
骨盤体操により性機能の早期改善 (Sobhgol, et al. Sex Med Rev. 2019)
妊娠中から産後まで、『継続』するのがいいということですね。
おわりに
妊娠期の運動の有効性と注意点を説明しました。
軽く息がはずむ程度で、継続できる運動を楽しんでください。
決して無理をしないのが、自分のため、赤ちゃんのためにも大切です。
また、産婦人科でスポーツドクターの先生もたくさんいらっしゃいます。
周産期だけでなく、女性アスリートはぜひ相談してみてください!